040刊行 2026-10-20 ・ 読了約6分

国は、どうやったら作れるのか。

How Do You Make a Country? — Counting the States Born Since 1945, and the Movements That Failed

1945年以降に生まれた国は、ほぼ全部が元の持ち主に手放されたか、持ち主が消えた国だった。持ち主に断られた分離運動で国になれたのは129件中8件、暴力を使わなければ0件だった。

調べ方1945年以降の独立の記録(ICOW)と、分離運動のデータ(Griffiths)

規模
129か国・断られた運動129件・出口条項20本
触れる
運動を選ぶと、断られてから何が起きたかが出る
結論
鍵は作る側でなく、持ち主にある。
Abstract

要旨

新しい国を作りたい人は、まず何をすればいいのか。土地か、軍か、住民投票か。1945年以降に実際に生まれた国と、生まれ損ねた運動を数えて確かめた。

1945年以降に生まれて国として扱われた129か国のうち、126か国は、元の持ち主(宗主国や親の国)が手放したか、持ち主そのものが消えた国だった。持ち主の合意なしに出ていって届いたのは、バングラデシュ・コソボ・台湾の3つだけで、どれも承認は欠けている。2011年の南スーダンを最後に、新しい国は1つも増えていない。

失敗した側も数えた。持ち主に最初に断られた分離運動は129件あり、国になれたのは8件(6%)。暴力を使わずに断られた51件は、1件も国になっていない。届いた運動はどれも、持ち主の解体・政権交代・外国の介入・大国の取引のどれかを待っていた。

持ち主が前もって「出ていってよい」と書いた出口条項も20本集めた。独立まで届いたのは4本で、そのうち3本は戦争や政権交代が終わった後に書かれていた。出口条項は独立の原因というより、決着の領収書だった。

国を作る力は、作る側より手放す側にあった。

Method

方法

この号には「129」が2回出てくる。1つは生まれた国の数、もう1つは断られた運動の数で、別のものである。たまたま同じ数になった。

生まれた国
ICOW Colonial History Data Set v1.1(Paul Hensel、2018)から、1945年以降に独立日か分離日をもつ129か国。のちに消えた国(東西ドイツ、南ベトナムなど)も含む。どの道で生まれたかは ICOW の型(脱植民地化・分離・分割・形成)を使い、「分離」の26件は、親の国の解体か、合意しての分離か、合意なしかを手で分けた。
断られた運動
Ryan Griffiths の分離運動データ(Harvard Dataverse、CC0、1816〜2011年の403運動)。1945年以降も続いていた本国からの分離運動151件のうち、持ち主が最初に拒否した129件を分母にした。海外植民地の独立運動は除いた。
出口条項
ある地域が独立できる手続きを、持ち主が憲法・法律・協定に前もって書いた例を手で20本集めた。住民投票の有無と得票率は、2012年までは Mendez と Germann の主権住民投票データで照合し、それ以降は報道で確かめた。
読み替え
Griffiths のデータは結末のコード表が公開されていない。そこで各コードに入っている事例から意味を割り出した(7と8は独立、1・2・5・10は消滅、3・4・6は自治や和平、9は継続中)。また、持ち主の最初の反応にはあと知恵が混じっている疑いがあり、元の符号で「受け入れ」だったバングラデシュ・クロアチア・スロベニア・ボスニアは、実際には持ち主が軍を出しているので「拒否」に直した。直さない場合は125件中4件(3%)になる。
Result 1

126か国は、持ち主が手放したか消えた

1945年以降に生まれた129か国を、どの道を通ったかで分けた。

宗主国が手放した96植民地・保護領・委任統治から。武力闘争を経たのは17か国で、残りの79か国は交渉で独立した。
親の国が解体した20ソ連から14、ユーゴスラビアから4、チェコスロバキアから2。
親の国が合意して分かれた5シンガポール、シリア、エリトリア、モンテネグロ、南スーダン。
占領国が分けた・合併した5東西ドイツ、南北朝鮮、南北イエメンの合併(1990年)。
合意なしで出ていった3バングラデシュ、コソボ、台湾。バングラデシュはインド軍の参戦で勝ち、国連加盟はパキスタンが承認した1974年まで待った。コソボは約100か国が承認しているが国連には入れていない。台湾を承認しているのは12か国。

戦ったかどうかでは分かれない。宗主国が手放した96か国の8割は交渉で独立している。分かれ目は持ち主が手放したかどうかだった。

波は2回来ている。1960年代のアフリカ(1960年だけで17か国)と、1990年代のソ連・ユーゴスラビアの解体。手放される植民地も、解体する連邦も残り少なく、国連加盟国は2011年から193のままである。

Result 2

断られた運動は、129件中8件

生まれた国だけを見ると、うまくいった例しか目に入らない。そこで、持ち主に最初に断られた分離運動129件の行き先を数えた。

独立して国連に加盟8件
消滅(鎮圧・崩壊・他国が取った)52件
2011年時点で継続中51件

残りは、自治や和平で収まった17件と、部分的な承認にとどまるコソボの1件。比べるために、持ち主が最初から受け入れた運動も見ると、22件すべてが独立していた。

暴力の大きさで分けると、差がはっきり出る。

暴力なし
51件中、独立0件。消えるか、自治で収まるか、まだ続いている。
小さな衝突
37件中、独立2件(年の死者25〜999人)。
戦争
41件中、独立6件とコソボ(年の死者1,000人以上)。ただし同じ戦争組の4割近くは消えている。

戦争は確率を上げるが、戦争だけで届いた例はない。届いた9件(8件とコソボ)では、どれも持ち主の側で何かが起きていた。ユーゴスラビアの解体(スロベニア・クロアチア・ボスニア)、外国の軍事介入(バングラデシュ・コソボ)、持ち主の政権交代(エリトリア・東ティモール)、大国の取引と圧力(ナミビア・南スーダン)。分離する側の力だけで持ち主を折った例は、1945年以降1つもなかった。

Result 3

出口条項は、決着の領収書

持ち主が断るなら、最初に「出ていってよい」と書かせておけばいい。そう考えて、独立の手続きが前もって書かれた例を20本集め、使われたかを数えた。

常設型(いつでも出られる)11本中 独立0使われたのはネイビス島の1回だけで、1998年に賛成61.8%と必要な3分の2に届かなかった。ソ連は使われそうになると手続き法でふさぎ、ビルマは1962年のクーデターで憲法ごと止めた。エチオピアの無条件の分離権は30年以上使われていない。
期限型(何年後に投票)9本中 独立4使われたのは7本。独立はモンテネグロ・エリトリア・東ティモール・南スーダン、結果待ちがブーゲンビル。ニューカレドニアとスコットランドは投票で届かず、西サハラは投票そのものが行われず、アルバは自分から取り下げた。

独立した4本の書かれた時期を見ると、エリトリアは戦争に勝った後、東ティモールは持ち主の政権が倒れた後、南スーダンは20年の内戦の終わりだった。持ち主の側の事件が先に起き、出口はその合意を書き留めただけである。

条項が先にあって独立を生んだのは、モンテネグロの1本だけだった。連合はすでに名前だけになっており、賛成の基準(55%)を持ち主ではなくEUが決め、持ち主の側にもEU加盟交渉という取り分があった。最後の鍵を持ち主が握ったままだと、ブーゲンビルのように賛成97.7%でも止まる。

Try it

運動を選ぶ

運動を選ぶと、持ち主の答え、その後に持ち主の側で起きたこと、結末が順に出る。上の段は国まで届いた9件、下の段は届かなかった例と、まだ結果が出ていない例である。

  1. 持ち主の答え
  2. 持ち主の側で起きたこと
  3. 結末

届いた9件は Griffiths のデータの分母129件に入っているもの。届かなかった側は代表例を手で選んだ。カタルーニャ・イラクのクルディスタン・ブーゲンビルの2012年以降の出来事はデータの外にあり、百科事典と報道で確かめた。

Conclusion

結論

国は、作る側の努力だけでは作れない。1945年以降の129か国のうち126か国は、持ち主が手放したか、持ち主が消えた国だった。

持ち主に断られた運動が国になれたのは129件中8件で、暴力を使わなければ0件。届いた例も、持ち主の側の事件を待っていた。前もって書かせた出口条項も、ほとんどは決着が先にあり、それを書き留めたものだった。

作る側が自分で持てる手は、2つに絞られる。一緒になるときに、第三者が基準を決める期限つきの出口を書いておくこと(モンテネグロ型)と、持ち主が手放したくなる損得を作ること。どちらも、土地や軍を探す話ではない。

※ 過去の記録を数えたものです。
特定の独立運動や領土問題について、どちらが正しいかを述べるものではありません。分離運動の結末コードは事例から割り出した読みで、運動の数え方は Griffiths の基準(組織と指導者があり、独立を求めたもの)によります。出口条項20本は手で集めたもので漏れがありえ、型の差は記述であって検定ではありません。承認国の数は2026年時点の報道によるもので、年ごとに動きます。
Next

次の問い

国まで作らなくても、税や関税だけ別のルールで動く地域なら作れるのではないか。

日本にも例はある。沖縄の国際物流拠点産業集積地域では、対象の事業の法人所得の40%を損金にできる特例があるが、使われたのは2023〜25年度で2件、1件、0件だった。内閣府自身が、対象業種が5業種に限られているので使える企業が少ない、と書いている(令和9年度税制改正要望)。ここでも、ルールを決める持ち主(税なら財務省と与党の税制調査会)が手綱を握っている。

次の問い:日本の地域限定の税の特例は、いくつあって、どれくらい使われているのか。

References

ネタもと