039刊行 2026-10-20 ・ 読了約6分
ダウジングは、当たるのか。
Does Dowsing Work? — From Chevreul's Pendulum to a Finger on the Screen
本物の水を流した管で試すと、ダウザーの成績は偶然と同じだった。それでも振り子が動くのはうそではなく、答えが見えなくなると止まった。
調べ方シュヴルールとファラデーの原典、カッセルとミュンヘンの試験、自作の記録計
- 規模
- 実験4つ・自作の記録計1台
- 触れる
- 振り子に指を置くと、答えが見えるときと伏せたときの指の動きが並ぶ
- 結論
- 当たらない。動かしているのは手。
要旨── 動かしていたのは、手だった
L字の棒や振り子を持って歩くと、地下の水の上で棒が開く。ダウジングは、当たるのか。
答えは、200年近く前からほぼ出ている。1812年、フランスの化学者シュヴルールは、手に下げた振り子が水銀の上で揺れるのを自分で確かめ、目隠しをすると揺れが止まることを見つけた。1853年、ファラデーは「テーブル回し」の参加者の手とテーブルのあいだに小さな指標を挟み、テーブルより先に手が動いていたことを示した。
水脈を当てる腕前そのものも、本物の水を流した管で何度か試されている。ドイツのカッセルでは約30人のダウザーが試され、結果は偶然と同じだった。2年かけたミュンヘンの大規模な実験は「当たった人がいる」と発表されたが、統計の取り方をめぐって解釈が割れている。
そこで、当たるかどうかではなく外れたとき指がどう動いていたかを記録する装置をスマホの画面に作った。作ってみて分かったのは、振り子の揺れは片側への寄りを大きくしない、ということだった。
振り子は、手が考えていることを大きく見せる道具だった。
方法── 古い実験を読み、新しく1台作る
- 原典
- シュヴルールがアンペールに宛てた公開書簡(1833年、英訳は Skeptical Inquirer 2001年)と、ファラデーのテーブル回しの調べ(1853年、のち論文集に収録)。
- 実地の試験
- 本物の水を流した管で、ダウザー本人が公正と認めた条件で行われたもの。カッセルの試験と、ミュンヘンの納屋の実験。ミュンヘンは、批判した側(エンライト)と実験した側(ベッツ)の両方の文章を読んだ。
- 装置
- スマホの画面に指を置くと振り子が揺れ、左右どちらかへ寄ったら確定する「ダウジング記録計」を作った。正解は伏せ、決めた試行数だけ走らせ、最後にまとめて答え合わせをする。指の動きはすべて記録する。
見えないと、振り子は止まる── シュヴルールとファラデー
振り子が勝手に揺れる、と人から聞いたシュヴルールは、1812年に自分で試した。鉄の輪を麻糸で吊るし、水銀の上にかざすと、たしかに揺れた。
水銀と振り子のあいだにガラス板を差し込むと、揺れは小さくなって消えた。板を抜くと、また揺れた。ここまでなら「水銀から何かが出ている」とも読める。シュヴルールが偉かったのは、そこで自分の腕を疑ったことである。
- 腕を支える
- 振り子を持つ腕の下に木の台を置き、肩から手のほうへ滑らせた。台が手に近づくほど揺れは小さくなり、糸を持つ指まで支えると止まった。
- 目隠し
- 揺れているところで目隠しをされると、揺れはすぐ弱まった。ガラス板を差し込んでも、もう変わらなかった。止まったあと15分ほど水銀の上にかざし続け、そのあいだに知らされないまま板を何度か出し入れされたが、二度と動かなかった。
シュヴルールの解釈は、振り子が揺れると思うと、本人の知らないうちに腕の筋肉がその方向へ動く、というものだった。目で揺れを追うと、その小さな動きがさらに後押しされる。のちに「観念運動」と呼ばれる現象である。
40年後の1853年、ロンドンでは数人が手を置いたテーブルが回り出す「テーブル回し」がはやっていた。ファラデーは、2枚の板のあいだにガラスの棒を挟んでゴムで留め、上の板がずれると藁の針が振れる指標を作った。手とテーブルのあいだに置くと、針は、手がテーブルより先に動いていたことを示した。参加者が針を見られるようにすると、テーブルはたいてい回らなくなった。
どちらも、動かしていた本人は「自分は動かしていない」と本気で思っていた。うそをついたのではなく、手が先に動き、本人はそれに気づけなかったのである。
本物の水でも、偶然と同じ── カッセルの約30人
観念運動で棒が動くことと、水が当たらないことは別の話である。手が動いていても、その手が水脈を感じて動いているなら当たるはずだ。だから実地で試す必要がある。
ドイツの超常現象の検証団体 GWUP は、フランクフルトの北のカッセルで3日間の試験を行い、地元のテレビが中継した。参加したダウザーは約30人で、ほとんどがドイツの人だった。
- 仕掛け
- 平らな野原の地下50cmにプラスチックの管を埋め、大量の水を流したり止めたりできるようにした。管の位置は地表に色の帯で示してあり、ダウザーは「いま水が流れているか」を答えるだけでよかった。
- 同意
- ダウザーは全員、始める前に「この試験は公正であり、100%当てられると思う」という書面に署名した。
- 結果
- 偶然に期待されるとおりの成績だった。
大事なのは条件の付け方である。試験の前に、ダウザー自身が「これなら当てられる」と認めている。終わってから「この条件では力が出ない」と言うことはできない。水は本物で、地面も本物だった。
当たった人は、選ばれた10回だった── ミュンヘンの解釈は割れている
逆に「当たった」と発表された実験もある。1986年に研究費を受けて始まった、ミュンヘンの物理学者ベッツらの実験である。
納屋の1階に水を流す管を置き、ダウザーは2階を歩いて、真下の管の位置を当てる。研究者は、6人は偶然では説明しにくいと結論した。
これを統計の側から読み直したのが、カリフォルニア大学サンディエゴ校のエンライト(1999年)である。
- 選んだ10回
- 報告でいちばん見事に見える図は、104シリーズのうち最も成績のよかった1シリーズ、ある1人の10回分だった。843回もやれば、そのくらいの10回はどこかに出る。
- 繰り返し
- 「上手」とされた6人は、別のシリーズでは上手ではなかった。6人中5人は、毎回「線のまん中」と答えた場合より成績が悪かった。
- 手法
- 解析の方法が標準的なものでなく、データを見てから合わせた形になっている。普通の方法で見ると、全体は偶然と区別がつかない。
ベッツはこれに反論し、エンライトの解析は粗く、別の研究者の再解析では元の結論がむしろ強まったと書いている。どちらが正しいかを、ここで決めることはしない。決められるのは、争点がどこにあったかである。何回やるか、どの回を数えるか、どう解析するかを、走らせる前に決めていなかったことが、解釈を割った。
揺れは、寄りを大きくしない── 記録計を作って分かったこと
ここまでの実験を、スマホの画面で自分に向けて行えるようにしたのが記録計である。机に置いたスマホの盤に指をそっと置くと、振り子が揺れ、指のわずかなずれが続けば片側へ寄って確定する。
- 先に決める
- 試行数(30・50・100回)を始める前に宣言する。途中でやめた回は記録に残らない。「当たってきたから続ける」を封じるためである。
- 封をする
- 正解の並びは開始時にまとめて作り、その SHA-256(並びの指紋)を先に画面に出す。終わってから正解を開示すれば、途中で作り替えていないことを照合できる。
- 対照を挟む
- 答えを伏せた盲検5回ごとに、答えを見せる回を1回挟む。この回は成績に数えず、「答えを知っているときの指の動き」の基準にする。ファラデーの指標にあたる。
- 引き直し
- 判定に届かなかった回は、同じ正解のまま引き直す。正解を変えて引き直せると、嫌な回を捨てて当たりだけ残せてしまう。
作ってみて、初版には設計の誤りがあった。振り子の揺れの平均で左右を決めていたが、それでは指を約7mm(スマホで約43px)寄せないと判定に届かなかった。無意識の寄りはそんなに大きくない。
理由は、共振の性質にある。振り子を固有の周期で揺らすと、揺れの幅は大きくなる。しかし大きくなるのは往復の振れであって、片側への寄り(平均の位置)は大きくならない。L字の棒が手首のわずかな傾きで振り切れるのは、揺れのせいではなく、棒の形がずれを増幅しているからである。
そこで判定は、揺れではなく指そのもののずれで行うことにした。指を置いた位置からのずれを、少しずつ漏れる貯金箱のように積み上げる。2pxの寄りでも続けば約6秒で判定に届き、平均がゼロのぶれは積み上がらない。試したところ、平均ゼロのぶれで判定に届いたのは50回中0回だった。揺れは手のふるえを目に見える大きさにする表示として残した。
使い方も、画面に書かないと伝わらなかった。スマホは机に置いたまま、手首と肘を机から浮かせる。腕を机に付けると、指はほとんど寄らない。シュヴルールが木の台で腕を支えたとき揺れが止まったのと、同じことが画面の上でも起きた。
振り子に指を置く── 答えが見えると、指は寄る
記録計の小さな版である。「答えを見て」と「答えを伏せて」を切り替え、盤のどこかに指をそっと置いて、力を抜いて待つ。振り子が左右どちらかへ寄って止まると1回になる。数回ずつやると、下の表に、決まるまでの秒数と指が動いた距離が並ぶ。
| 回数 | 当たり | 決まるまで | 指が動いた距離 | |
|---|---|---|---|---|
| 答えを見て | 0 | - | - | - |
| 答えを伏せて | 0 | - | - | - |
スマホは机に置き、手首と肘を浮かせる。白い丸をつかんで動かすものではない。決まるまでは中央値、距離は平均。答えを見ている回は、狙わなくても指が答えの側へ寄りやすい。伏せた回の当たりは、何回やっても半分前後に落ち着くはずである。
結論── 当たらない。でも、手は正直に動いている
ダウジングは、当たらない。本物の水を流した管で、ダウザー自身が認めた条件で試すと、成績は偶然と同じだった。当たったと発表された実験は、何回のうちどれを数えるかを走らせる前に決めておらず、批判した側が普通の方法で読み直すと効果は消えた。
ただ、棒や振り子が動くこと自体はうそではない。動かしているのは本人の手で、本人はそれに気づけない。シュヴルールの目隠しも、ファラデーの指標も、答えが見えなくなると動きが止まることでそれを示した。
だから測る値打ちがあるのは、当たり外れより手のほうである。答えを知っているときと知らないときで、指の動きはどれだけ違うのか。その差は人によって違うのか。記録計は、その差を自分で取るための道具として作った。
次の問い:答えを知っているときの指の寄りは、人によってどれだけ違うのか。
ネタもと── 原典・検証・反論
- ASpitz, H. H. & Marcuard, Y. "Chevreul's Report on the Mysterious Oscillations of the Hand-Held Pendulum"(Skeptical Inquirer, 2001年7・8月号)
シュヴルールのアンペール宛て書簡(1833年、Revue des Deux Mondes)の全訳。1812年の実験、腕の支え、目隠しのくだり。 - BFaraday, M. "Experimental Investigation of Table-Moving"(1853年)
Experimental Researches in Chemistry and Physics(Taylor & Francis, 1859年)382〜391ページに収録。概要は Wikipedia「Table-turning」。 - CThe Skeptic's Dictionary「dowsing」
GWUP のカッセルの試験(約30人、地下50cmの管、事前の同意書)。 - DEnright, J. T. "Testing Dowsing: The Failure of the Munich Experiments"(Skeptical Inquirer, 1999年)
約500人・43人・843回・104シリーズ、選ばれた1シリーズ、上手とされた6人の再現性。 - EBetz, H.-D. "Follow-Up: Dowsing Successful"(Skeptical Inquirer, 1999年)
実験した側から、エンライトの批判への反論。