038刊行 2026-09-28 ・ 読了約5分
コンビニの店長は、棚に好きなものを置けるのか。
Can a Store Manager Stock Anything? — Reading Seven Franchise Contracts
大手7チェーンのうち6チェーンは、店長が本部の推奨品以外を仕入れるのを認めていた。3店に1店は実際に置いたことがあり、塔婆や熊よけの鈴まであった。
調べ方7チェーンの法定開示書面と、公正取引委員会の調査
- 規模
- 7チェーン・回答約8,300店
- 触れる
- チェーンを選ぶと、本部が店に認めている範囲が出る
- 結論
- 6チェーンは店に認める。止まるのは審査。
要旨── 契約書は、店に開いていた
コンビニの棚に並ぶ商品は、ほとんどが本部の勧めるものである。では店長は、本部が勧めていないものを棚に置いていいのか。
大手7チェーンが法律に基づいて公開している契約の説明書面(法定開示書面)を読むと、7チェーン中6チェーンは、店が本部の推奨品以外を仕入れることを認めていた。本部が「妨げない」と書くチェーンもあれば、「本部の指定する取引先のみ」と書くチェーンもある。
実際に置いている店も多い。公正取引委員会が加盟店に聞いた調査では、36.9%の店が独自に仕入れて売ったことがあり、本部に止められたことがあるのは8.3%だった。置かれていたのは地元の野菜や地酒だけではない。塔婆、熊よけの鈴、競輪新聞、動物園の入場券まであった。
止まる理由はお金ではなく、本部の品質管理の審査だった。その基準は公開されていない。外から商品を置きたい人にとっては、店長を口説き、店長が本部に申請し、本部が認める、という3段の道になる。
店長の棚は思ったより開いていた。ただし、鍵は審査の窓口にあった。
方法── 契約書と、加盟店の答えを読む
- 契約書
- 日本フランチャイズチェーン協会が公開している法定開示書面のうち、コンビニ7チェーン分(セブン-イレブンAタイプ、ローソンBn契約、ファミリーマート、ミニストップ、セイコーマート、デイリーヤマザキ、ポプラ)。「仕入先の推奨制度」と「商品の販売価格」の項を読み比べた。
- 実態
- 公正取引委員会「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査報告書」(2020年9月)の本文。加盟店オーナーへのアンケートのうち、独自仕入れの項(回答約8,300人)。
- 費用
- 外から商品を置く側にかかるお金。バーコード(JANコード)の登録料は GS1 Japan の料金表、製造物責任(PL)保険は商工会議所などの制度の料率表で確かめた。
- 事例
- 新聞・業界誌に出た、外の業者がコンビニの棚に入った例。
6チェーンは、店に認めていた── 書きぶりは4段階
契約書は、本部が店にどこまで許すかを書いたものである。店が推奨品以外を仕入れることについて、書きぶりはチェーンでかなり違う。ゆるい順に並べる。
売値のほうは、ほとんどのチェーンが「本部は推奨価格を示すが、決めるのは加盟者」としている。例外はミニストップのファストフードで、本部の指定価格で売ると書いてある。
3店に1店は、置いたことがある── 塔婆から熊よけの鈴まで
契約書の上の自由が、実際に使われているのか。公取委のアンケートが答えていた。
回答が多かったのは、地元の農協や農家の野菜と果物、地酒、和菓子や駄菓子、生花、地元の特産品、卵。その他の回答には、こんな品が並んでいた。
- 塔婆
- 熊よけの鈴
- 競輪新聞
- 動物園の入場券
- 釣り餌
- 遊漁証
- トンネル通行券
- 長靴(積雪地帯)
- 薪
- 盆灯篭
- 学校指定の体操着
- 地主の経営する会社の商品
- 知人のアーティストのCD
- 地元のラーメン屋のお土産ラーメン
- 駅伝関連グッズ
- ハラール商品
公取委の報告書に列挙された回答から抜き出した。
どれも、その町のその店でしか売れないものばかりである。本部の品ぞろえは全国で同じにできるが、塔婆や熊よけの鈴が要る町は限られる。独自仕入れは、本部の棚からこぼれる、その町だけの需要を拾っている。
一方で、推奨品を意に反して仕入れている店も51.1%ある。書面の自由と、店の実感は別物である。
止まる理由は、審査── お金でも、店長の気持ちでもない
止められた8.3%の店に理由を聞くと、最も多いのは「その他」の43.1%だった。中身を読むと、多くが品質管理の話である。
- 審査
- 品質管理の担当部署の検査が要る。本部から工場の確認が必要と言われた。トレーサビリティ(産地や製造の履歴)の観点から問題があると言われた。書類の申請に膨大な時間がかかると言われた。
- 水準
- 「地元の業者が本部の衛生管理のレベルを超えられなかった」という回答もある。
- 空気
- 「逆らうと契約更新などで不利益があると思った」が26.8%、「強行すれば不利に扱う可能性を示唆された」が25.7%。
止められた品には、野菜・果物・鮮魚・地域の特産品と並んで、「生き物(昆虫等)」もあった。
契約書の上で店に開いている自由は、本部の審査を通る商品に限った自由である。その審査の基準は、どのチェーンも公開していない。
外から置くには、3段ある── 棚ごと借りた青果店
ここまでは店長の話だった。では、農家やメーカーのように外から商品を置きたい人はどうなるか。契約書が認めているのは店が仕入れることなので、外の人は直接は置けない。道は3段になる。
- 1段目
- 店長に仕入れたいと思ってもらう。
- 2段目
- 店長が本部に申請する(デイリーヤマザキなら書類を出すだけ、ミニストップなら見本と理由書)。
- 3段目
- 本部の品質管理の審査を通る。
お金の関門は小さい。バーコードの元になる GS1 事業者コードは、年商1億円未満なら1年17,050円(3年払いなら27,500円、税込)。製造物責任の保険は、2018年の商工会議所などの制度の料率で、補償1億円なら農林水産の食品製造で売上100万円あたり年112円だった(この制度は2020年に別の保険へ移ったので、いまの料率は見積もりが要る)。
3段を1店ずつ越えるのは重い。それを数百店まとめて越えた例がある。ローソンの店頭で地元の青果店が野菜や果物を売る「棚貸し」である。始まりは北九州の高上青果で、コロナで飲食店向けの売上が半分ほどに落ちた2020年の暮れ、社長がローソンに持ちかけた。小倉魚町二丁目店の青果の売上は、1日1,000円未満から約6万円に増えた。導入店は2021年4月に福岡県を中心に約50店、11月末には九州と関東で約400店になった。
仕組みは「消化仕入れ」と呼ばれる形で、青果店が仕入れと値付けを決め、売れ残りのリスクも負う。店は棚とレジを貸し、売れた時点で仕入れが立つ。売上からローソンの取り分を引いた大半が青果店に入るが、取り分の率は公開されていない。
この形が広がったのは、店長が抱えるはずの仕入れ・値付け・売れ残りを、青果店がまとめて引き受けたからだと読める。店長を1人ずつ口説く1段目が要らなくなり、本部と話がつけば数百店に入れる。
チェーンを選ぶ── 本部が店に認めている範囲が出る
チェーンを選ぶと、店が推奨品以外を仕入れることについて、開示書面がどう書いているかが出る。書いているのは本部で、相手は店である。目盛りは、ゆるいほど多く点く。
各社の法定開示書面(日本フランチャイズチェーン協会で公開、2026年9月に取得)の「仕入先の推奨制度」「商品の販売価格」の項から要約した。契約の型によって違うことがある。
結論── 店長の棚は、審査つきで開いている
コンビニの店長は、本部が勧めていないものを棚に置ける。7チェーン中6チェーンの契約書がそれを認め、3店に1店が実際に置いたことがある。
ただ、その自由は本部の品質管理の審査を通る商品に限られる。審査の基準は公開されておらず、止められた店の多くはそこで止まっていた。
外から商品を置きたい人から見ると、契約書の「妨げない」は3段目の話にすぎない。店長を口説き、店長が申請し、審査を通る。近道は1店ずつ口説くことより、すでに審査を通って棚に入っている納品業者と組むことになる。
次の問い:棚貸しの取り分は何%で、審査では何を見られるのか。
ネタもと── 一次資料・報道
- A日本フランチャイズチェーン協会「情報開示書面」
コンビニ7チェーンの法定開示書面(中小小売商業振興法に基づく)。2026年9月に取得。 - B公正取引委員会「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査について」(2020年9月2日)
独自仕入れの項は 報告書本文(PDF) の124〜127ページ。 - C公正取引委員会「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」
本部が取引先を指定することと、優越的地位の濫用の線引き。 - DGS1 Japan「GS1事業者コードの新規登録手続き」
年間売上高別の登録申請料。 - E中小企業製造物責任制度対策協議会「中小企業PL保険制度料率表」(2018年7月以降始期用)
制度は2020年6月にビジネス総合保険制度へ一本化された。 - F日本経済新聞(2021年)高上青果とローソン/「ローソン、相棒は地元青果店」/日経クロストレンド
棚貸しの経緯、消化仕入れの仕組み、導入店数。いずれも有料記事で、事実の要点だけを引いた。