037刊行 2026-09-25 ・ 読了約5分

福岡に泊まった人は、どこへ行くのか。

Where Do Overnight Visitors to Fukuoka Spend Their Days? — Reading the Prefecture's Mobile Location Survey

県の携帯位置データ(2024年)を読み直した
4市 × 国内・外国人、60市町村
触れる
泊まった市を選ぶと、前後の日の行き先が並ぶ
結論
外国人の1位は湯布院。
Abstract

要旨

福岡市には、毎晩たくさんの旅行者が泊まる。では、泊まった人は昼にどこにいるのか。福岡市に泊まった外国人の半分以上は、泊まった日と前後の日の昼を、県の外で過ごしていた。

福岡県は2024年の1年分、携帯電話の位置から推計した旅行者の動きを報告書にまとめている。そこには、福岡市・北九州市・久留米市・飯塚市に泊まった人が、泊まった日と前後の日の昼にどこにいたかが、割合で載っている。これを4つの市と国内・外国人の8通りで並べ直し、県内60市町村の表と突き合わせた。

福岡市に泊まった外国人が昼にいた場所は、福岡市そのものを除くと1位が大分県の由布市(湯布院)で9.8%。県内でいちばんの太宰府市(5.1%)の2倍近い。2位以下も別府・熊本と県外が続く。一方、久留米と飯塚に泊まった外国人は、昼は泊まった市と同じくらい福岡市にいた。

福岡は目的地というより、九州を回るための宿だった。

Method

方法

材料
福岡県『「モバイル空間統計」を活用した観光客の来訪・宿泊や周遊の状況調査』(令和8年3月)。2024年1〜12月のデータ。NTTドコモの携帯電話の位置から推計した「モバイル空間統計」を使っている。
泊まった人
夜中の2〜4時台に、その市に2時間以上いた人(延べ)。国内の旅行者は、片道80km以上か8時間以上移動した人で、通勤・通学や地元の人は入らない。出張や帰省は入る。外国人は、空港や港で出入国が分かる人。
昼にいた所
泊まった日と前後の日の10〜17時台に、2時間以上いた市町村。泊まった市そのものも入る。割合は報告書に載っている値のままで、人数は契約上公開されていない。
検算
報告書から表を抜き出し、8通りそれぞれで「県内+県外=100」などの関係を100件確かめた。本文の割合は、60市町村の表(資料3)の同じ市の行と8つとも一致した。
Result 1

泊まった市を、選んでほしい

泊まった市と、国内の旅行者か外国人かを選ぶと、昼にいた場所の上位12が並ぶ。色は、泊まった市・県内のほかの町・県外の3つ。

泊まった市
だれが
出典:福岡県『「モバイル空間統計」を活用した観光客の来訪・宿泊や周遊の状況調査』(令和8年3月)をもとに作成。報告書に載るのは、国内は0.2%以上、外国人は0.4%以上の行き先だけ。帯の割合は、それより小さい行き先も含めた合計。

国内と外国人を切り替えると、帯の色の比率が大きく動く。国内の旅行者は、どの市でも6割以上が県内で昼を過ごす。外国人は、飯塚を除く3市で半分前後が県外に出ている。

Result 2

外国人の行き先1位は、湯布院

福岡市に泊まった外国人が、福岡市のほかに昼にいた場所の上位5つ。

由布市(大分・湯布院)9.8%
太宰府市(福岡)5.1%
別府市(大分)5.0%
熊本市(熊本)4.2%
北九州市(福岡)3.2%福岡市そのものは32.5%。県外の合計は53.2%で、県内60市町村のどこよりも高い。

福岡市に泊まって、昼は湯布院・別府・熊本にいる。県内でいちばん多い太宰府でも、湯布院の半分ほどだった。ただし、日帰りで往復したのか、福岡を出て次の宿へ向かう途中だったのかは、このデータでは分からない。分かるのは、泊まった夜の前後の昼にそこにいた、ということまでである。

Result 3

国内の2位は、羽田空港だった

福岡市に泊まった国内の旅行者の行き先2位は、東京都大田区(5.7%)。太宰府(4.8%)より上にある。

大田区には羽田空港がある。「2時間以上いた」には、飛行機を待つ時間も入る。東京から飛んできた人が、羽田で2時間過ごしただけで「大田区にいた」と数えられる。成田市(1.0%)や愛知県常滑市(中部国際空港、0.7%)が上位に顔を出すのも同じ理由である。北九州・久留米・飯塚でも、大田区は上位5位以内に入っていた。

観光地の人気と、移動の途中でいた場所が、同じ物差しで並んでいる。表の上位をそのまま「人気の行き先」と読むと、羽田空港が福岡の観光地2位になってしまう。

Result 4

久留米と飯塚の外国人は、昼は福岡市にいた

泊まった市そのものと、福岡市。昼にいた割合がほぼ同じだった。

久留米市に泊まった外国人17.1% と 16.5%久留米市にいた割合と、福岡市にいた割合。
飯塚市に泊まった外国人35.4% と 33.2%飯塚市にいた割合と、福岡市にいた割合。
(くらべ)久留米市に泊まった国内の旅行者46.0% と 11.0%国内の旅行者は、泊まった市で昼を過ごすほうが4倍多い。

どちらも福岡市から電車で1時間かからない市である。外国人にとっては、福岡市の外に宿を取り、昼は福岡市へ出る、という動き方が珍しくないようだ。福岡市のホテルが高い日や取れない日に、周りの市が受け皿になっている可能性がある。ただ、泊まった理由はデータに無いので、これは推測にとどまる。

Result 5

県境の町は、隣の県で昼を過ごす

県内60市町村の表で、泊まった国内の旅行者のうち県外で昼を過ごした割合を並べた。真ん中の町で17.4%。

上毛町45.0%
吉富町37.2%
福岡市34.3%空港を持つ福岡市は3位。羽田などで過ごした時間もここに入る。
大任町0.0%いちばん低い町。県の真ん中の筑豊にある。

上位の2つは、どちらも県の東の端で、山国川をはさんで大分県中津市と接する町である。泊まるのは福岡県側でも、昼の暮らしは川の向こうにある。行き先の内訳はこの表に無いので、どこへ行ったかまでは言えない。

Conclusion

結論

福岡に泊まった外国人の半分以上は、昼を県の外で過ごしている。行き先の1位は湯布院で、太宰府の2倍近かった。

福岡県の観光を「県内の名所にどれだけ人が来たか」で測ると、この動きは見えない。福岡市は、空港と宿を持つ九州の玄関として使われている。逆に久留米や飯塚は、福岡市に通うための宿として使われている面がある。泊まる町と、昼を過ごす町は、同じとは限らない。

ただし、ここにあるのは割合だけで、人数は無い。泊まった理由も、日帰りか移動の途中かも分からない。分かったのは、夜と昼で人のいる場所がずれているということまでである。

次の問い:湯布院へ行った人は、その夜どこに泊まったのか。

※ 福岡県の公式の分析ではありません。
数字は県の報告書に載っている割合をそのまま使い、並べ方と読み方を私たちが加えました。報告書の市町村別の旅行者の割合(資料1)は、県が一部の町の抜けを直して差し替える予定のため使っていません。
これは allfesta Labs の研究です

4つの市の行き先は、地図で見られます。

自由研究は、allfesta の研究部門です。本稿の表は、九州・山口の地図に行き先を円で置いた市民向けの画面として公開しています。60市町村の表も並べ替えられます。表の抜き出し・検算・言語化は AI が行い、研究部が検証しています。

References

ネタもと