要旨— 中立を目指すと、何が起きるか
「世界中のだれの母語でもない、中立な共通語」は作れるのか。机上で論じる代わりに、約120語の極小人工言語 Welan を実際に設計し、その全語の語源を監査した。設計時の理想は明快だった——どの国の言葉にも偏らない。語根を世界中から、少しずつ集める。
ところが、できあがった124語の出自を数えると、ラテン語が61%、ヨーロッパ由来が83%を占めていた。「世界中から」のつもりが、非ヨーロッパの語根はたった5語(4%)。中立な世界語は、思っていたよりずっと難しい。
中立を目指したのに、できたのは "うっすらラテン語" だった。
方法— 言語を作り、その語源を全数監査する
- 言語の設計
- 音は10子音・5母音、クラスター無し。文法は例外ゼロの3規則(SVO/修飾は後ろ/名詞主語に印
i)。語彙は約120語の合成式で、少ない語を組み合わせて表す極小言語。 - 語根の調達方針
- 「どの国も中心に置かない」ため、世界中の言語から少しずつ採るのが理想。akwa(羅 aqua)・jen(中 人)・oto(日 音)・mama(万国)・sama(梵)のように散らす想定だった。
- 語源の監査
- 全124語に「最も代表的な由来」を1つ割り当て、ラテン/ギリシャ/英語/スペイン/中国/日本/サンスクリット/万国(幼児語)/考案…の系統に集計した。
- 中立度の見方
- 「最大シェア」が小さいほど中立。1つの系統が過半を占めるなら、その言語は——意図に反して——その系統に寄っている。
結果— 124語の出自を、ぜんぶ並べる
色は系統、横棒はその割合、下のチップは実際の語。凡例をクリックすると、その系統の語だけが光る。チップを押すと由来が出る。一目でわかる——暖色(ヨーロッパ)が、ほぼ全部だ。
※ 1語=1代表由来の簡易分類。割合は語数ベース。英語はゲルマン語だが多くがラテン由来でもあり、「ヨーロッパ由来」はさらに大きいとも言える。
結論— 作れる。ただし、油断するとラテン語になる
答えは「作れる。ただし、放っておくとラテン語に戻る」。中立を狙ったのに偏った理由は、はっきりしている。
「世界中の人に認識してほしい」と思った瞬間、最も国際的に通じる語=科学・医学・学術の語彙=ラテン/ギリシャ語へ手が伸びる(aqua, sol, luna, terra…)。"通じやすさ" と "中立" は、しばしば逆を向く。本当にどの国でもない言語を作るには、認識しやすさをわざと捨て、非ヨーロッパの語根を意図的に増やし、設計者が自分のバイアスと能動的に戦い続けるしかない。
それでも、できた Welan は——例外ゼロの文法で15分で読み書きでき、だれの完全な母語でもない。"完全な中立" には届かなかったが、"だれの母語でもない" 言語は、確かに手元にある。中立は、ゴールではなく、戦い続ける方向だった。
この自由研究の足回りは、
1つの言語を本当に作ることです。
AI自由研究は、福岡発の AI 会社 allfesta の研究部門です。本稿の語源監査は Welan 全124語から決定的に集計し、言語の設計・語彙づくり・結果の解釈と言語化は AI が行い、研究部が検証しています(実AIの所在を方法で開示)。Welan は、読んで・話して試せる本物の言語として公開中です。
ネタもと— 一次資料・前提
- ASonja Lang, Toki Pona: The Language of Good (2001)
約120語の極小言語。極小設計と合成式語彙の直接の源。 - BL. L. Zamenhof, Unua Libro(エスペラント, 1887)
国際補助語の古典。「中立な共通語」という理想と、欧州語偏重という長年の批判の原典。 - CWelan 語彙データ(全124語・語源タグ付き)
本監査の一次データ。welan.allfesta.com