要旨— 行政文書の定型表現を数える
福岡県が公開する補助金関連文書 13本(交付要綱・募集案内・リーフレット・申請書類の記載例・実施計画書)を、AI が設計した行政定型句辞書(5カテゴリ・約70語)で採点した。決まり文句率は交付要綱で 11.9%、チラシで 1.8%。同じ補助金の文書でも、約 6.5 倍の開きがあった。
さらに、決まり文句率と一文の長さは負の相関(r = −0.50)を示した。決まり文句で固める文書と、長い一文で攻める文書があり、「読みにくさ」は一つの指標では捉えられない。同じ入力には、必ず同じ結果が返る。
決まり文句は、申請者が最後に読む文書に集まっていた。
方法— 決まり文句率をどう測ったか
福岡県が 2025〜2026 年に公開した補助金関連文書 13 本を PDF から取得し、本文テキストを抽出した。各文書について、行政文書に特徴的な定型表現の辞書とのマッチを取り、その非重複の文字カバレッジを「決まり文句率」とした。
- 決まり文句率
- 辞書にマッチした文字の非重複カバレッジ ÷ 本文文字数 × 100。「本文の何%が定型表現の文字でできているか」
- 辞書の5カテゴリ
- ①法令調の語尾(〜ものとする/〜しなければならない 等)②条文参照の常套句(次の各号/前項/当該 等)③儀礼的接続(なお、/ただし、/下記のとおり 等)④留保・ぼかし表現(等/その他/必要に応じ/適宜 等)⑤行政文体の硬い接続(において/により/に係る/について 等)
- 文書グループ
- 13本を5タイプに分類:要綱(1)/案内・手引き(3)/リーフレット(2)/記載例(2)/実施計画書(5)
- 副指標
- 平均文長(句点「。」で区切った一文あたりの文字数)。決まり文句率とは独立した「読みにくさ」の軸として併記
- 対象範囲
- 福岡県の3つの補助金/事業(生産性向上・賃上げ/経営革新・賃上げ/地域少子化対策)の公開文書。すべて機械可読な文字 PDF。出典は References に明記
- 限界
- 「決まり文句」は行政文体に特徴的な定型表現を辞書で操作的に定義したもの。文章の良し悪し・正確さ・必要性を評価するものではない。定型表現には法的に必要なものも多く含まれる
- AIの関与(開示)
- 本研究では AI が「決まり文句」の辞書(5カテゴリ・約70語)を公用文・行政文書の通念から設計し、研究部が検証して固定した。各文書のカバレッジ計算は完全に決定的。下の AI 所見は算出された統計量から AI が言語化し、研究部が確認したもの
※ 「決まり文句率」は文書の質や誠実さを測るものではない。観測可能な定型表現の密度である。
結果— 決まり文句は、どこに集まるか
文書タイプ別に決まり文句率を平均すると、交付要綱が突出して高い。要綱は補助金の効力を法的に定める文書で、案内・手引き、記載例、リーフレットの順に下がっていく。決まり文句は、申請者が最終的に従う「効力を持つ文書」に集中していた。
文書タイプ別の決まり文句率(平均)
縦軸=決まり文句率(%)/横軸=文書タイプ
一方、決まり文句率と一文の長さの関係を見ると、負の相関(r = −0.50)が現れた。決まり文句率が高い交付要綱は一文が短く(平均90字)、決まり文句率が低い実施計画書は一文が極端に長い(最長226字)。読みにくさには、定型句で固める方向と、長い一文で攻める方向の2つがある。
決まり文句率 × 平均文長
横軸=決まり文句率(%)/縦軸=平均文長(字)/点=13文書
文書 13 本を決まり文句率の順に並べると、次のようになる。交付要綱だけが二桁、最も低いのは添付書類の記載例(賃金台帳)とチラシだった。
| 決まり文句率 | 文書 | タイプ | 平均文長 |
|---|
決まり文句率を辞書のカテゴリ別に分解すると、最も寄与が大きいのは「行政文体の硬い接続」(〜において/〜により/〜に係る 等)だった。法令調の語尾や条文参照より、こうした漢語+格助詞の硬い接続のほうが、行政文書の手触りを支配している。
決まり文句率に占めるカテゴリ別の寄与
5カテゴリの文字カバレッジ寄与シェア(全13文書合計)
- 01交付要綱の決まり文句率は 11.9%。本文の約 8 文字に 1 文字が定型表現の文字だった。チラシ(1.8%)の約 6.5 倍。
- 02決まり文句率と一文の長さは負相関(r = −0.50)。要綱は「短い定型句の文」、実施計画書は「長い一文」。読みにくさは一軸では測れない。
- 03決まり文句の正体の半分以上は「〜において」「〜により」「〜に係る」といった硬い接続。劇的な法令用語より、地味な接続が手触りを決めていた。
あなたの文章も、計ってみる。— 決まり文句率サブツール
仕事のメール・申請書・案内文など、どんな日本語でも貼ると、同じ5カテゴリの辞書で決まり文句率を採点し、どこが定型表現かをハイライトする。同じ文を入れれば、必ず同じ点数が出る。
// 計算はすべてこのブラウザ内で決定的に実行。入力テキストはどこにも送信されません。
結論— 決まり文句は、効力を持つ文書に集まる
福岡県の補助金関連文書 13 本において、決まり文句率は文書タイプによって約 6.5 倍の開きがあった。最も高いのは交付要綱——補助金の効力を法的に定め、申請者が最終的に従う文書である。入口のチラシやリーフレットは平易に書かれ、核心の要綱は定型表現で固められていた。
これは、行政文書が「読ませたい文書」と「効力を持つ文書」で文体を切り替えていることを示唆する。また、決まり文句率と一文の長さが負の相関を示したことは、読みにくさが単一の尺度では測れないことを意味する。本研究は文書の良し悪しや必要性を評価するものではない。定型表現の多くは法的・形式的に必要なものでもある。
allfesta Labs は、こうして普段は「お役所言葉」と一括りにされる文体を、辞書とカバレッジで淡々と数に置き換え、何が言えて何が言えないのかをはっきりさせていく。考察の言語化は AI が担い、研究部が検証している。
この研究の足回りは、
本気のAI技術です。
AI自由研究は、福岡発の AI 会社 allfesta の研究部門です。本稿のカバレッジ計算は決定的なテキスト統計で、辞書の設計と結果の解釈は AI が言語化し研究部が検証しています(実AIの所在を方法で開示)。本体では、地域と行政のための実用的な AI を作っています。
ネタもと— 一次資料・前提
- A福岡県中小企業生産性向上・賃上げ緊急支援補助金(令和7年12月補正分)(福岡県, 2025)
交付要綱・募集案内・募集リーフレット・交付申請書類の記載例・賃金台帳の記載例の5文書を解析。 - B福岡県中小企業経営革新・賃上げ緊急支援補助金(福岡県, 2025)
チラシ・申請の手引き・作成についてのQ&Aの3文書を解析。 - C福岡県地域少子化対策重点推進事業(福岡県, 2025)
各事業の実施計画書から5文書を解析。 - D文化庁「公用文作成の考え方」(建議, 2022)
公用文の平易化・定型表現に関する国の指針。本稿の決まり文句辞書のカテゴリ設計の前提として参照。 - Eテキストの操作的計量(コンテンツ分析)の枠組み
辞書に基づく語句のカバレッジ計測は、コンテンツ分析の標準的手法。R013(パブコメ本気度スコア)と同系統の方法論。 - FAI自由研究 — 自作研究プロジェクトの流用
本稿は allfesta Labs の自作研究プロジェクト(申請文書のテキスト解析)の流用。カバレッジ計算は決定的、辞書設計と解釈は AI 生成・研究部検証。