要旨— 本気度は採用率に届くのか
福岡市の3つの計画パブリックコメント190件を、AI が学術的な操作定義として設計した5因子(長さ・具体性・論拠・独自性・行動指示)で採点した。本気度スコアと、市が「原案を修正した」率の相関はほぼゼロ(Welch t = 0.67)。
修正された17件のうち、本気度上位は用語訂正・表記統一・グラフ表題などの編集的指摘でほぼ占められていた。長文の方向性提案は、本気度が高くても「原案通り」「記載あり」「その他」に分類され、原案修正には反映されなかった。
本気を出した行は、修正される行と、ほぼ重なっていなかった。
方法— 5因子をどう測ったか
福岡市が2025〜2026年に公開した4つのパブコメ実施結果から、本文テキストが機械可読な3計画(みどり/住生活/循環)の全意見を抽出した。地名・施設名・氏名は事前にマスキング。各意見について以下の5因子を意見テキストから決定的に算出し、全体で z-score 化したのち単純平均して合成スコアとした。
- 長さ係数 length
- log₁₀(字数+1)。短文は本気度が出にくいという前提
- 具体性係数 specificity
- 数字・ページ参照・年表記・固有名詞風語(〜計画/〜条例/〜区 等)の出現密度
- 論拠係数 reasoning
- 「なぜなら/ため/により/と考える/と認識/根拠/課題」等の因果・推論マーカー密度(感想表現の「と思う/と感じる」は意図的に除外)
- 独自性係数 originality
- 同一計画内の他意見との 3-gram Jaccard の補数。定型句率の裏返し
- 行動指示係数 directness
- 「べき/してほしい/提案する/お願い/要望/新設」等の命令・要請マーカー密度
- 合成 score
- 5因子をそれぞれ全体 z-score 化し単純平均。値の意味は「全意見の平均からの距離」
- 対象範囲
- 3計画 N=190(みどり139・住生活43・循環8)。4本目の景観計画は公開PDFがスキャン画像で機械可読でなく、決定的な再現性を保つため OCR は用いずテキスト解析の対象外(メタ参加指標には含む)
- AIの関与(開示)
- 本研究では AI が「本気度」の操作定義(5因子)を学術文献の通念に沿って提案し、研究部が検証して固定した。各意見のスコア計算自体はすべて決定的で、同じ入力には必ず同じ結果が返る。下の Conclusion 末尾の「AIによる解釈」は、算出された統計量を入力に AI が言語化し、研究部が確認したもの
※ 「本気度」は意見の真摯さ・誠実さ・正当性を測るものではない。テキスト面で観測可能な徴候の合成量である。本気でない人が高得点になることも、本気な人が低得点になることもある。
結果— 本気度と修正率の相関
「修正された」群と「それ以外」群で本気度平均を比較したが、差はほぼ無かった。本気度が最も高い平均を示したのは「原案通り」群で、最も低いのは「記載あり」「その他」群だった。
対応区分別の本気度(平均)
縦軸=合成スコア平均(z-score)/横軸=対応区分/エラーバー=±1σ
長さクォータイルで層別すると、最も短い四分位(≤74字)の修正率が12.8%で最高、中程度の長さ(121〜199字)が4.2%で最低、最も長い四分位(>199字)は8.5%だった。長さと修正率に単調関係はない。
長さクォータイル × 「修正された」率
縦軸=修正率(%)/横軸=意見の長さ四分位
修正された17件の中身を本気度順に並べると、上位の多くが用語・表記・図表の修正提案であることが分かる。長い意見が修正につながった例もあるが、その場合も「ページ番号と図中要素を名指しした具体的な編集指摘」が含まれていた。
| 本気度 | 計画 / № | 字数 | 意見(冒頭抜粋) |
|---|
参考として、本気度上位5件の意見の対応区分を見ると、すべて「修正」ではなく「原案通り」「その他」「記載あり」に分類されていた。
| 順位 | 本気度 | 計画 / № | 対応 | 意見(冒頭抜粋) |
|---|
4つの計画の参加メタを並べると、提出者数あたりのコメント数(人あたりの意見密度)はみどり計画が突出して高い。これは募集期間や告知範囲の差ではなく、計画テーマの市民関心度の差を反映している可能性がある。
| 計画 | 提出者 | 件数 | 件/人 | 募集日数 | 本研究の扱い |
|---|
- 01本気度が高い意見ほど、原案を「修正」させたわけではない(Welch t=0.67、p>0.5)。本気度と採用結果は実質無相関。
- 02修正17件のうち本気度上位は、用語訂正・グラフ表題・西暦/和暦の統一など、ページ番号を伴う「編集的指摘」が多くを占めた。
- 03本気度が最も高かった群は「原案通り」。詳細で熱量のある意見は、原案修正には反映されず「ご意見は施策推進の参考にさせていただきます」として処理されていた。
あなたの意見も、計ってみる。— 本気度スコア・サブツール
パブコメに書きたい(または書いた)意見を貼ると、5因子のうちブラウザ内で計算できる4因子(長さ・具体性・論拠・行動指示)で本気度を採点する。同じ文を入れれば、必ず同じ点数が出る。独自性は対象計画の全意見コーパスが必要なため、ライブ版では計算しない。
// 計算はすべてこのブラウザ内で決定的に実行。入力テキストはどこにも送信されません。
結論— 行政が直すのは、字句のレベル
福岡市の3計画パブコメ190件において、本気度スコアと「原案を修正した」率の間に統計的な関係は見られなかった。修正されたのは多くが用語・表記・図表のページ単位の指摘で、計画の方向性や追加施策を求める長文意見は本気度の高低にかかわらず「原案通り」「記載あり」「その他」として処理されていた。
これは、行政文書としての計画案で「修正」と判定可能なのは原案の字句に対する具体指摘に限定される構造を示唆する。方向性の提案は原案の語句を直す対象ではなく、計画運用のフェーズで「施策推進の参考」として扱われている。本研究は意見の質的妥当性や行政判断の正否を評価するものではない。
パブコメ制度は、市民意見の反映よりも、市民意見を集めたという手続的事実の記録に強みがある — というのは、別の研究で扱うべき仮説である。本稿で言えるのは、「同じパブコメに対して、本気度の高い意見と、原案が修正された意見は、ほとんど別の集合だった」というそれだけだ。
本気度の高い意見が「修正」群に偏らなかった原因として、(i) 行政文書の原案修正は字句・表記・図表の編集可能範囲に限定される、(ii) 方向性提案は計画の語句ではなく運用フェーズで扱う設計、(iii) 提出者は「修正させる」より「記録に残す」目的で書く傾向、の3仮説が考えられる。本データだけではこれらの分離はできない。次の研究は、提出者の意図と行政の修正基準の双方を観測対象にする必要がある。
この研究の足回りは、
本気のAI技術です。
AI自由研究は、福岡発の AI 会社 allfesta の研究部門です。本稿のスコア計算は決定的なテキスト統計で、操作定義の設計と結果の解釈は AI が言語化し研究部が検証しています(実AIの所在を方法で開示)。本体では、地域と行政のための実用的な AI を作っています。
ネタもと— 一次資料・前提
- A福岡市みどりの基本計画 改定 パブリックコメント実施結果(福岡市 住宅都市みどり局, 2026)
N=246(うち本研究 139 件を解析)。提出者・対応区分・クラスタは原資料準拠。 - B福岡市住生活基本計画 改定 パブリックコメント実施結果(福岡市 住宅都市みどり局, 2026)
N=43(全件解析)。本研究で公開PDFからテキスト抽出・マスキング。 - C循環のまち・ふくおか推進プラン 改定 パブリックコメント実施結果(福岡市 環境局, 2026)
N=8(全件解析)。サンプルが小さく分布は参考値。 - D福岡市景観計画 策定 パブリックコメント実施結果(福岡市 住宅都市みどり局, 2026)
N=66。公開PDFがスキャン画像で機械可読でないため、本文解析の対象外(メタ参加指標のみ含む)。 - EKrippendorff, K. (2018). Content Analysis: An Introduction to Its Methodology (4th ed.). Sage.
テキストの操作的計量における基本文献。本研究の「観測可能な徴候の合成」という枠組みの前提。 - FTukey, J. W. (1977). Exploratory Data Analysis. Addison-Wesley.
四分位による層別と分布の比較は EDA の標準手法に従う。 - GAI自由研究 — 自作研究プロジェクトの流用
本稿は allfesta Labs の自作研究プロジェクト(pub-comments)の流用。スコア計算は決定的、操作定義の設計と解釈は AI 生成・研究部検証。